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東京高等裁判所 昭和31年(ラ)505号 決定 1956年7月18日

抗告人 ヤマト紙業合資会社

主文

本件抗告を却下する。

理由

本件抗告理由の要旨は、本件競売の申立は昭和三十一年一月三十一日になされ、競落許可決定に至るまでに四回の競売期日が開かれているが、競売法第二七条第三項所定の登記簿上の権利者に対し競売期日の通知ありたることは一回もない。抗告人は同項の規定せる利害関係人であるから、当然抗告人にも競売期日の通知があるべきに拘らず、一回の通知をもなされなかつた違法がある。よつて原決定を取消すとの裁判を求めるというにある。

記録によると、抗告人は本件競売の目的たる土地建物及び右建物に備付けられた工場抵当法第三条による機械器具の賃借人であることが認められるので、考えるに、よしんばその賃借権が本件競売申立人たる株式会社駿河銀行その他の第三者に対抗し得るとしても、依然として債権であつて、物の上に有する権利とはならないから、抗告人は競売法第二七条第三項にいわゆる不動産上の権利者に該らず、したがつて同項の利害関係人に該当しないものと解するを相当とする。それ故抗告人は本件競落許可決定に対し抗告をなし得ないものであることは競売法第三二条によつて同法による不動産の競売手続に準用せられる民事訴訟法第六八〇条の規定により明白である。のみならず他の利害関係人に対する競売期日の通知の缺欠は本件抗告の理由となし得ないことは競売法第四六条、民事訴訟法第六七三条により疑を容れない。

よつて本件抗告を却下すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 柳川昌勝 村松俊夫 中村匡三)

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